完敗

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そんな事を思いながら 小さく笑った俺を 袴田さんは覗き込む。 「ボロボロだな、桐生君」 「ハハッ…」 「桐生君ほどイカした男でも 落ち込む事ってあるんだ」 「何ですかそれ」 思わず笑ってしまった俺に 袴田さんもクスッと笑って。 「いや…俺みたいな オッサンになるとさ… 間違ってるって分かっていても そこから引き返す勇気もないから 落ち込む事すら出来ねぇよ。 そうやって落ち込んだり 苦しんだり出来るのって やっぱり若い人の 特権だなって思うわ」 袴田さんの言葉の意味は イマイチ理解出来ないけど。 葵さんが幸せなら… それを見守るのも悪くないかな…。 そんな風に思った。 あの事件が起きるまでは───。
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