第1章

2/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
深山奏(みやま かなで)は唸っていた。 例の通りに、同人絵師をしている従姉の藤野明日香(ふじの あすか)に渡すBLの原稿の作成に苦慮している。 >――ネームはまだ? 同じ内容のメールが何度も来ていて、電源をオフにしてやろうかと、半ば本気で考えていた。 父親の深山楽(みやま がく)が音楽の仕事でイギリスに行ってしまったので、ヘビースモーカーの父が狭いアパートの部屋に滞在中に、染みつけたヤニを落とすべく、カーテンを総とっかえして洗濯し、窓をガシガシと洗剤で磨いて、フローリングを蒸気で掃除して…をしている間に疲れて眠ってしまったので、後回しにしたことが山積したわけで…。 プロットを立てるのだって簡単じゃない。まず作品のタイトルでつまずくし、キャラを考えるのだって一苦労。名前からして他の話と似かよらないようにする為に字画を考えたり、いろいろなエッセンスを詰め込んで肉付けするも、却って破綻して最後には放り投げたくなる。 単純に丸にAとBという顔を書かれた男子高校生二人が、放課後の教室で密かに背伸びして、ちょっと変わった大人の行為に励んでいるなんて、誰が見たいんだよ?と、最後は自分でもケチをつけたくなる。 とまぁ、最初は暇を持て余した時の、時間潰しに始めたことにドツボにはまっているわけで…。 ト書きを書いてキャラを動かすにしても、話の大まかな流れすら出来ていないこの状況を、どう打開せよと言うんだよ。と、いろいろと呪いたくなる。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!