母性

11/40
前へ
/40ページ
次へ
月島さんには桐生の元には 戻らないと宣言しておきながらも やっぱり私は桐生を 見捨てる事なんて出来なかった。 桐生のお母さんの御遺体の 確認へと向かうタクシーの中 片時も私の手を離そうとしない 桐生の手を振り切るなんて出来ない。 真っ直ぐ前を見つめたまま 淡々と子供の頃の事や お母さんの事を話す桐生の言葉を 黙ったまま受け止める。 彼が誰かを愛する事に どうして臆病だったのか 全ては桐生の生い立ちが 大きく影響して来たと理解出来た時 自然と私の頬に涙が伝った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

744人が本棚に入れています
本棚に追加