なにかひとつだけでもあれば……

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薄暗く、広い空間。 なにもない、なんにもない、場。 すすり泣き、漏れる嗚咽。 硬い地面に、落ちる雫。 「……ない、ないよ、ない……」 舌足らずで、涙としゃっくりが混ざる声。 幼い、どうやら男の子の声。 「ぼくには、なんにも……」 小さな手が、何かを求めるように空間へ伸びる。 が、その手は空を掴むことすらなく、むなしく垂れ下がる。
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