なにかひとつだけでもあれば……

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なにも持っていないと。 神様がなにも与えてくれなかったと。 うつむいて泣く君。 もしかしたらなにか、大きなものを抱えている子もいるんだろう。 それぞれ抱えている箱の大きさは違うのかもしれない。 もしかしたら君だって、見えていないだけで、君にしか与えられなかったものを持っているのかもよ? 神様が不平等だ、なんていうのは、当たり前の事。 でも、君は、きっと私のもとで、私の腕のなかで、満開の桜のような暖かな笑顔をくれるはず。 だから私は、君を抱きしめるよ。 私は、きっと、君を愛するよ。 「有希……ゆうき」 君になにもないだなんて、二度と言わせない。 君には未来が、希望がある。 もっと自分に期待して、どんなことにも挑戦してほしい。 思っていたとおり、顔をしわくちゃにして大きな声で産声をあげた赤ちゃんは、私の腕のなかで、満開の笑顔を見せてくれた。
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