カゾク ノ イエ

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 自分も俺達の『家族』として招き入れて欲しかったのか。  俺達を自分の『家族』にするために招き寄せたかったのか。 「お父さんの体調が悪くなったのも、彼女の影響ね。お父さんは精神的に強かったから、体に影響が出ちゃったのよ」  検査で悪いところが見つからなければ、すぐに退院できるはずよ。  おばさんはそう言ってくれた。 「お母さんと妹さんは、彼女の影響をモロに被ってしまったのね。彼女は特にお母さんに執着していたみたい。最初にお母さんの様子がおかしくなってしまったのも、そのせいよ」  じゃあ、俺が一番影響を受けなかった理由はなんだろうな? 父さんほど精神的に強いわけでもないだろうし。 「それはね、彼女には男兄弟がいなかったんじゃないかしら。だから、あなたの事をどう扱っていいのか、分からなかったんじゃないかと思うのよ。でも、興味はあったみたいよ。この家に入り込んだのも、あなたの部屋の窓からだし」  疑問が顔に出たのだろう。おばさんがそう教えてくれた。  俺の部屋の窓から入り込んだ? もしかして、あの引越しの時か? 「それで、もう大丈夫なのかしら? あんな事は起こらない?」  母がおばさんに質問する。 「ええ、彼女の事は、もう心配しなくてもいいわ。私がちゃんと対処しておいたから」  おばさんがニッコリする。  どう対処したのか気になるところだが、きっと、聞いても分からない。っていうよりも、聞かない方がいいんじゃないかと本能で悟ってしまった。 「本当はね。この家からは引っ越した方がいいんだけど、そうも言ってられないでしょ? だから、今度からおかしな事が起こったら、遠慮しないで私に電話してきなさい」  俺と母さんは、ありがとうございます、と言って深く頭を下げた。 「さあ、子供は寝る時間だ! 明日、寝坊したなんて言わせないぞぉ!」  おじさんが気を遣ってくれたのか、わざとおどけて明るい声を出す。 「はい。じゃあ、俺はこれで」  その後、おばさん夫婦と母の間で何が話されたのかは知らない。きっと、俺は知らなくてもいい事なんだと思っている。  その夜、俺は何日かぶりに夢も見ずにゆっくりと眠った。  翌日、おばさん夫婦が帰って行ったのと入れ違いに、父が病院から帰って来た。検査の結果、どこにも異常は見つからなかったとの事だ。  大事をとって会社を1日休んだが、それからは見違えるように元気になり仕事に励んでいる。
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