重ねた心

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桐生の家に着くと 見慣れていたリビングには 小さな仏壇が増えていた。 黒縁の額の中で 穏やかな笑みを浮かべる 桐生のお母さんに 静かに手を合わせていると 私の隣に座り込んだ桐生が 仏壇の脇に置いてあった 薄緑色の貯金通帳を 私に手渡す。 「葵さんにもこれを 見て欲しかったんです」 意味が分からず首を傾げると 桐生は私を自分の膝に 座らせてその通帳を ピラリとめくった。
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