401号室の怪

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「地球人は、手を触れずに物体を動かすことができるのか?」  ガニガニ・9・ボーテは唐突に聞いてきた。  賃貸マンション・レジデンス茜台403号室。  テーブルをはさんでの夕食の時間だった。テーブルにはルケルケ・7・トーが作った今夜の献立が湯気を立てている。クリームシチューだった。ちなみにルーの好みはS&Bである。 「いいえ……そんなこと、できませんよ」  聞かれたルケルケ・7・トーは、スプーンをもつ手を止めてきょとんとした顔つきになる。  改めて解説するが、二人は宇宙人である。母星の命を受けて地球人の調査に来ているのだった。ルケルケ・7・トーは「伊藤博文」という名前で数年前から、ガニガニ・9・ボーテは「豊臣秀吉」という名前でつい最近、共に男性地球人(30歳ぐらい)の姿に化けて403号室で暮らしている。
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