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雨に濡れることなどまったく気にしないので、傘もささずにスーツを濡らしながら歩いていた。
レジデンス茜台のベランダをふと見上げると、ちょうど401号室に干してあった布団が取り込まれるところだった。
「ん?」
しかし、タカのように目の良いガニガニ・9・ボーテは、その布団を取り込む人間がいないことが見えていた。
布団はひとりでに取り込まれ、ひとりでにあいたサッシの中へと入っていったのである。
「ううむ……」
部屋の主である万法院妖子はこの時間、図書館で勤務している。
雨は1時間後にはやみ、そして、午後4時ごろ、ランドセルを背負って帰ってくる真穂と、午後6時半をすぎ、図書館から自転車で帰ってくる妖子の姿を、ベランダでずっと外を見張っていたガニガニ・9・ボーテは確認している。
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