岐路

17/38
前へ
/38ページ
次へ
「桐生さん、頑張って」 微笑みながら言ってくれた 澤木さんに親指を立てると 閉じかけた扉の向こうで 澤木さんは笑いながら呟いた。 「大好きだったよ」 閉じた扉を見つめながら 俺は小さく笑う。 …返事も言わせないとは さすがプライドの高い 澤木さんらしい告白だな。 もう二度と彼女と会う事も ないのかもしれないけど 静かに下降して行く箱の中で 俺はポツリと呟いた。 「ごめん澤木さん。 だけどありがとう」 彼女の想いも、 月島の想いも、 何があっても無駄にしないように 俺は、一番大切な人を捕まえに 小さな箱から飛び出した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

642人が本棚に入れています
本棚に追加