2014年5月

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

2014年5月

また蝉のうるさい季節が近づいてきた。 もう、5月半ばだ。 三田村 裕樹は、29歳 独身♂。 九州、福岡にある、小さなIT企業で働くSEだ。 G.W.も特に何かするわけでもなく、2日ほど休日出勤や持ち帰りの仕事をこなし、 夜は毎日マンション自室でソファに座り、適当にテレビ番組をザッピングしながら、 酒を飲んで過ごした。 今日は5月16日の金曜日。 いつものように午後9時まで会社に残り、客先の担当SEとメールで仕様の 細かい確認を行いつつ、開発チームのメンバー(社員、協力会社社員含む5人)にタスクを 割り振っていた。 あまり予算をかけられないため、合間を見て自分も今携わっている業務用アプリケーションの 設計と実装を行っていた。 そのとき、裕樹の上司である課長の佐藤竜司が裕樹の開発チームメンバー全員に声をかけた。 「みんなお疲れ。協力会社のみんなも遅くまでご苦労さん。今のところみんなのおかげで  スケジュールだいぶ前倒しで進められてます。ありがとう。で、今日はちょっとねぎらいの意味も込めて飲みにいくぞ!全部俺のおごり・・といいたいとこだけど、飲み代は社長からもらってる分と俺のポケットマネーだから心配しなくていいぞ。好きなもの頼んでくれ。ほどほどにな(笑)」 「やったー!」 裕樹以外の開発チームメンバーから歓声が上がった。 裕樹はその言葉を聞いても気にせず、パソコンの前に向かっていた。 「おい、三田村!お前も嬉しそうな顔しろよ!」 「え、あ、はい。」 「もうすぐあがれそうか?」 「あ、もう少しかかりそうです。」 「じゃあ途中から参加でもいいから、飲み会に必ず顔出せよ。」 「あ、じゃあ協力会社の三人はさっき進捗聞いたし、もうあがっていいですよ。内藤君も、あがって大丈夫だよ。」 「先輩、じゃあ待ってますね。」 裕樹と同じ会社で裕樹の3年後輩の内藤は、早々とパソコンの電源を落とし始めた。 「じゃあ、先に始めとくし、お前が来たらまた乾杯するからな。必ず来いよ!」 佐藤はそう裕樹に声をかけて、帰り支度を始めた。 「はい、後で必ず顔出します。」 裕樹はそう言って、残りの作業を終わらせることに集中した。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!