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2014年5月
また蝉のうるさい季節が近づいてきた。
もう、5月半ばだ。
三田村 裕樹は、29歳 独身♂。
九州、福岡にある、小さなIT企業で働くSEだ。
G.W.も特に何かするわけでもなく、2日ほど休日出勤や持ち帰りの仕事をこなし、
夜は毎日マンション自室でソファに座り、適当にテレビ番組をザッピングしながら、
酒を飲んで過ごした。
今日は5月16日の金曜日。
いつものように午後9時まで会社に残り、客先の担当SEとメールで仕様の
細かい確認を行いつつ、開発チームのメンバー(社員、協力会社社員含む5人)にタスクを
割り振っていた。
あまり予算をかけられないため、合間を見て自分も今携わっている業務用アプリケーションの
設計と実装を行っていた。
そのとき、裕樹の上司である課長の佐藤竜司が裕樹の開発チームメンバー全員に声をかけた。
「みんなお疲れ。協力会社のみんなも遅くまでご苦労さん。今のところみんなのおかげで
スケジュールだいぶ前倒しで進められてます。ありがとう。で、今日はちょっとねぎらいの意味も込めて飲みにいくぞ!全部俺のおごり・・といいたいとこだけど、飲み代は社長からもらってる分と俺のポケットマネーだから心配しなくていいぞ。好きなもの頼んでくれ。ほどほどにな(笑)」
「やったー!」
裕樹以外の開発チームメンバーから歓声が上がった。
裕樹はその言葉を聞いても気にせず、パソコンの前に向かっていた。
「おい、三田村!お前も嬉しそうな顔しろよ!」
「え、あ、はい。」
「もうすぐあがれそうか?」
「あ、もう少しかかりそうです。」
「じゃあ途中から参加でもいいから、飲み会に必ず顔出せよ。」
「あ、じゃあ協力会社の三人はさっき進捗聞いたし、もうあがっていいですよ。内藤君も、あがって大丈夫だよ。」
「先輩、じゃあ待ってますね。」
裕樹と同じ会社で裕樹の3年後輩の内藤は、早々とパソコンの電源を落とし始めた。
「じゃあ、先に始めとくし、お前が来たらまた乾杯するからな。必ず来いよ!」
佐藤はそう裕樹に声をかけて、帰り支度を始めた。
「はい、後で必ず顔出します。」
裕樹はそう言って、残りの作業を終わらせることに集中した。
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