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『なんだ⋯⋯これは」
光のカーテンに覆われた円筒形の空間内はどこか神聖な雰囲気が感じ取れた。直接的な攻撃魔法では無いようだが、先ほどよりも身体の動きが鈍いような⋯⋯。
『タイガっ!呪神化が強制解除されているぞ!』
「えっ、あっ、マジか!?」
心の中で叫ぶビビの言葉で状況を理解する。原理は不明だが、タイガの放つ呪いに対して何かしらの効果があるものなのだろう。
だが、呪神化とは曲がりなりにも神格を得た存在へと昇格するものだ。それが強制解除されたということは、目の前にいる宇宙人がある程度の神格を持つ存在に対して干渉が可能ということだ。
そんなことはこの世界では一部人間にしか成し得ないことであり、タイガの元いた世界でも聞いたことのない話だった。
試しに呪神化を試みるも、よく分からない力に干渉され、呪神化ができなかった。
「この空間じゃあ呪神化は無理か⋯⋯ってことは人型の呪霧も強制解除され───」
タイガが更なる問題点に気付いたのとほぼ同じタイミングで思考が中断される程の打撃がタイガの後頭部に打ち込まれる。
完全なる不意打ちに体勢を崩すタイガ。更に追い討ちをかけるように次元魔力弾がタイガに次々と命中し、タイガの肉体を跡形もなく消し飛ばした。
【⋯⋯生命反応は無し、逃亡した形跡も無いよ】
『分かった。でも引き続き周囲の警戒を維持して』
【分かったよカカルン。ドミニオンとエクスシアで簡易神聖域内を捜索させるね】
ルイファラが周囲を索敵した結果を伝える。しかし、カカルンは前回の経験からタイガを完全に殺したとは考えていなかった。
エクスシア達に蓄積されたタイガとの戦いの記録は、カカルンもルイファラを通じて確認している。燃やそうが切り刻もうが瞬く間に再生し、何事も無かったかのように戦い続けるその姿は、思い出すだけでも理解不能だった。色々な惑星で不死性を持つ生物に遭遇したことはあるものの、あれほどの存在に出くわしたのはカカルンにとって初めてのことだった。
それもあって、初めてタイガと接触した時点からルイファラによる存在分析を行なっていたのだった。
結果としては、数多の呪いにより不死となっている可能性があると分かった程度で、ルイファラの能力をもってしても複雑に絡み合う呪いの糸を解き切ることはできなかった。
故に、タイガの不死性を正面から突破することは不可能と判断した。しかし、殺し方はある。カカルンはルイファラの分析結果からそう結論づけていた。
『ルイファラ。念のため、ソウルブレイカーの準備を』
【オッケー!準備が出来次第、簡易神聖域内を対象として発動するね。予想時間は約200秒だよ】
カカルンはルイファラにトドメの一撃の準備するように指示を下した。
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