序章

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 その上履きには自分には記憶のない泥がついていた。 まるで雨の日に上履きで外に出たようだ。 しかも持ってみると水がしたたっていた。  夕姫はそれを見ても無言で靴を下駄箱の中にいれて靴下のまま廊下を歩きだした。 その靴下で歩く様子に気がついた生徒はそれでも誰も声をかけずに自分の教室に入っていく。 『おはよう!今朝のニュース見た?』 『見た!見た!あの犯人の顔、こわーい。』 夕姫の通りかかった一年の教室から楽しそうに今朝のテレビの様子を話している声が聞こえた。 夕姫は横目でそれを見てすぐにその場から去って自分の教室に入っていった。 ―ガラガラ…  夕姫がその教室のドアを開けるとざわついていた部屋がシーンとなった。 生徒達の顔がこっちを見ている。 夕姫はその顔を見て、少し寒気がした。
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