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―ピンポーン…ピンポーン…
そのチャイムは虚しくもなるだけで中から何も応答はない。
勇気と梨奈は約束通り一緒に夕姫の家の前で家主が出てこないかと見守っていた。
それは朝9時ごろのことだった。
梨奈はその可愛らしい顔を歪めてしかめっ面をしている。
しかも目の下にクマまで作っている。
勇気も同じようにクマをこしらえて疲れた顔で立っていた。
「駄目ね…。」
梨奈はその扉に右手を掛けるとため息を付いて勇気を見た。
勇気も梨奈を見返した。
―コツ…コツ…コツ…
二人がそうして夕姫の家の前で佇んでいるとその後ろの方から誰かが歩いてくる音がした。
革靴の音だ。
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