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夕姫らしき姿は見当たらなかった。
おばさんが足湯に浸かっていたり、向こうの方でおおきな荷物を持った若者がなにかしゃべってはいるが、夕姫の気配はない。
「なんで…。」
梨奈がそう言うと勇気が足湯の方に駆け出した。
おばさんがその勇気を見て疑問符を浮かべる中、何かを手に取った。
それは足湯のある場所の隅にちょこんと置かれたビニール袋だった。
そこには林檎が一つ、柿が二つ、そして財布と小さな黒い四角いプラスチック製の箱のようなものがその奥の方に入っていた。
「あぁ…」
勇気はその黒い箱を手にとって深いため息を着いた。
梨奈はその勇気に駆け寄った。
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