1. 高橋くんとセンセイ

2/7

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
気だるげな担任のかけ声とともに、学校に帰りのHR終了のチャイムが鳴り響く。 それと同時に教室はざわめきを取り戻し心なしかいつもより活気があるように思えた。その理由は分かりきっている。 今日は学生にとっての1週間の終わり。 「よっしゃあ!! きん!よう!びー!」 「随分楽しそうだなァ、高橋。 ところで、これは何だかわかるか?」 声をかけてきたのは2Cの担任のクマちゃんだった。 柔道部の顧問で体格がよく、ジャージを身にまとう姿は 正直野生の熊がジャージを来ているようにしか見えない。 そんなクマちゃんの手に摘まれている紙。漢字小テスト③と印刷された文字の下には、縦伸びした字で2C、高橋慎太郎。うん俺の字だ。 その横には 3/10と赤ペンで殴り書きされている この学校は小テストで半分以下の点数を取ると、放課後にプリント提出と再テストという鬼のようなルールがある。つまり俺は、 「楽しい補習の時間だぞ、高橋ィ」 「ぎゃあああああ無理いいいい!」 心からの叫びと共に自分のカバンを引っ掴むと、クマちゃんが反応するより速くスタートダッシュを決め込んでいた。 「あっオイコラァ高橋!逃げるんじゃねえ!」 「ぶはっ頑張れよ高橋ー!」 「慎太郎またなー!」 「逃げ切れ高橋ぃ」 「おーーーまたなー!」 教室を飛び出す直前にクラスの仲間からの野次が聞こえたが止まるわけにもいかず、大声で返事するとまた笑い声が聞こえた。くっそ、人事だからってなー!
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加