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「クマちゃんお願い今日だけ見逃してえええ!」
「見逃せるかァ!いいから止まれこの阿呆が!」
クマちゃんも速いが、足には自身のある俺はそうやすやす追いつかれたりはしない。しかし持久走になると、どーしても俺が不利になる。
階段を飛び降りると曲がり角に掃除用具入れを発見した俺は、その中に素早く押入ると乱れた息を整えてクマちゃんを待つ。あんまり掃除用具詰まってなくて良かったぜ、ほんとに!
「チッどーこ行きやがったァ、高橋の野郎....逃げ足早いったらありゃしねえ」
直ぐに現れたクマちゃんが通り過ぎるのを息を殺して待つ。
俺のいる掃除用具入れの向かいにあった教材室を探して居ないことを確認すると、舌打ちしながらまた別の所を探しに行ったようだった。
ふっふっふ、まさか掃除用具入れの中に隠れているとは思うまい!先生もなかなか諦めが悪い。
でも、どーーしても、今日はダメなんだ。
もうしばらく様子見て出よう、と僅かな隙間から廊下の様子を伺っていると、
目の前を通り過ぎていくスーツ姿の大好きな人を見つけて何も考えずに勢い良く掃除用具入れのドアを蹴りあけた。
「せんっせえええええ!!!!」
「っ、うお」
バンッと凄まじい音を立てて開いた掃除用具入れに驚いたように振り返った大好きな人に迷わず突進する。
少しよろめいたが、そんなに身長差のない俺をしっかり受け止めた先生に持っていたバインダーでべしん、と叩かれた。
「危ねえからそれやめろって言ったろーがアホ」
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