1. 高橋くんとセンセイ

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慣れた手つきでカードキーを翳すと、先生は俺の手を引いたままずんずんと奥に進む。 実は俺はある理由で先生とは昔から知り合いで良くしてもらってる。 でも、先生の部屋に入るのは初めてだ。 「せんせー、早く行かないとあの人怒ると思うんだけど....」 「あいつも普段散々好き勝手やってるんだ。少しくらい平気だろ」 「うわっぷ!」 先生の言葉に確かに、とは思ったけどあの王様気質のあの人は絶対不機嫌に違いない。あの人にこんな態度を取れるのも、きっと先生ぐらいしかいない。 今日だって先生と一緒に出かけるのは、俺と先生の共通の知り合いに呼び出されていたからなのだ。 これでいいか、という声が聞こえたかと思うと、バサっと投げつけられたワイシャツが俺の顔に命中した。 「コート取りに来たついでにシャワー浴びてこい。ワイシャツだけでも変えた方が良いだろ?」 「別にだいじょ」 「汗かいたままだと風邪引くから。いいから行け!」 先生の勢いに押された俺はハーイ、と慌てて返事をすると指示された脱衣所に駆け込んだ。 ちゃちゃっとシャワーを浴びて先生に借りたワイシャツを着る。これは.... 脱衣所のドアを開けてリビングに顔を出すと、ソファーに座ってなにやら携帯を弄っていた先生が顔をあげた。 「お前のワイシャツは洗っとくから洗濯機に突っ込んどけよ」 「ふへへ先生のワイシャツめっちゃいい匂い!せんせーの匂いがする、ぶほっ」 「オヤジかお前は!さっさと着替えて来い!」 せんせーの投げた硬めのクッションが俺の顔面へクリーンヒットした。思ったこと言っただけなのに!
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