第九章:別れの疑似体験

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       1.  けだるい朝だった。 体の節々が自分のものではないような、そんな感覚。 いつものように一人で摂る朝食の準備にかかるため、冷蔵庫を開く。 (っ……!)  めまいを感じ、手がすべる。 指先から、するっと落ちた卵が床の上で飛び散った。  ふうっ…と、息をつく。 ───自己管理はできているつもりだった。 両親不在のこの家で、自分のことは自分で、というのが当たり前の生活。
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