母性

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あの時、和哉君が私に飲ませようとしたものを、 ユウに飲ませてしまっていた。 ″ ただの媚薬だと思ったんだ。それを使って律子の願い、一回だけでも叶えてやろうかなって……″ 何度 彼が謝る姿を見ても、 腸が煮えくり返るとは、まさにこの事で それに許しを示す言葉を出さないまま、彼を光文舘の前で降ろした。 「……乗り捨てた車、どうするの?」 「あとで。まだ、あの道渋滞してるから」 とはいえ、 私の事故の為に頭を怪我していて、 治療をしないことは気にかかる。 「夜間病院でも良いから、行った方がいいよ」 「……ん。ヤバかったら行く」 少しふらつき気味にビルに向かって歩いていく和哉君の背中を見送り、 研究所を目指して発進させようとアクセルを踏んだその時____ 「ご主人大変そうですね」 嫌な声が、 助手席の開いていた窓から入り込む。 「…………あ」 くわえ煙草に、ふてぶてしい顔…… 「どこに行くんですか?」 私にガセネタを買い取らせようとした村上記者だった。
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