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「菜月を連れ出しただろ?」
篠崎美和が声を発する前に、電話に向かってその犯罪行為を断定する。
「…………可愛い子よね」
「何が目的なんだよ?」
先に車に乗り込んだ雪さんの長い髪が、
いつもより乱れているのを追っていた視線……
『雪さんは、何も悪くないのに……』
彼女の心労を思えば、
篠崎美和と関係を断ち切る事も、
「どっちに似たのかしら?
幼いのに、憂いを含みつつも涼しげな目元は水城ユウで、
色白でぷっくりした唇は母親譲りかもしれないわね」
追っていた取材ができなくる事も、
大したことじゃなかった。
「その子どうする気?俺への当て付けならマジで子供染みてる!
さっさと菜月返しに来いよ!」
俺にとって、大事なのは……
「イヤよ」
「……なに?」
最大の罪を犯した母さんと、
妹と…………
「私とエイドリアン博士の提言を軽く見た あなたがいけないのよ」
「事実なら他の記者に書かせればいいだろ?飛び付く人間なら他にもいるだろ?!」
「悪は、悪人の手で広められるべきなのよ」
できたら、
普通に、
穏便に生きていくこと____
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