再会

10/11
前へ
/11ページ
次へ
「え……」 やっぱり、彼女にも、子供がいたんだ。 普通のマンションだけど、 やっぱり中は実験室みたいな仕様に変えられた部屋で、 恐らく菜月ちゃんが遊んでいただろう、 女の子の人形や 古びた絵本が、 その亡くした娘の残像を頭の中に想像させる。 「……とても、かわいい女の子だった。 ウィルス学を専門にしているのに、 娘をそれから救えずに、 夫からもさんざん責められて、 美和は家庭を持つことを諦めたんだ」 「……………………」 「なんか、可哀想」 律子は同じ女だからなのか、 篠崎美和の過去を聞いて、ちょっと胸がいたくなったようだ。 「……だからって、人の娘 さらうか?」 ユウさんは井上博士があらゆる薬のサンプルの持ち出し準備が終えたのを見ると、 「和哉、律子は、これからどうする?」 疲れて座り込む俺達キョウダイに、 「どうするって?」 「俺は、あの女が行きそうな所を追うし、 この井上さんは娘さんが隔離された病院へ至急向かうらしいから。 どちらにも、 二人が付いてくる必要はないと思うぞ」 まるで 足手まといだと、 遠回しに言っているように聞こえてきた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加