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娘の瑠璃さんのために薬を隔離センターへ持っていかなきゃ行けない井上博士は、
「俺は、まだ死ぬわけにはいかないから、研究所には行けない。
俺も美和も立ち入り禁止だった地下室がある、そこがきっとエイドリアンの隠れ家だ。
あんたの娘を隠すつもりかもしれない。」
俺達が向かう方とは逆を歩き始めた。
「研究所ならわかるよ」
俺が初めて篠崎美和と出会った場所……。
「えー、また歩くの?!」
律子と電車マニアは不満そうにしゃがみこむ。
「嫌ならそこに二人でずっと座ってろ」
速度を緩めないユウさんの背中を追う俺。
「二人はいやっ!ユウさん!!待って!」
そして、律子が何かを思い出したかのように、
もう姿の見えない井上博士の方を振り返った。
「さっき、言いそびれたんだけど」
「ん?」
娘と妻のために歩くユウさんの足は、
とにかく速かった。
あとを追うのに必死な俺達。
「井上さんの自宅から出てきた奥さん、
雪さんにそっくりだったの」
「え」
未来は明るいと信じなければ、
前へは進めない______
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