再会-2

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″ ゆかり ″ 確かにこの男、私をそう呼んだ……。 「ま、待って!」 病院のようで、病院じゃない、 個人宅のようで、そうじゃない、 その薄暗い一室から、 私を置いて出ようとするエイドリアン博士の背中に声をかける。 「篠崎が拐った娘に会わせて!」 篠崎美和と、 エイドリアン博士の目的がよくわからない。 「……悪いけど、その子の事は私は知らないんだ。」 振り返り、 再び、動けない私の側に寄ってきたエイドリアン博士、 「地上に煩わしい人種が多すぎて、 歩くだけで疲れてしまうよね、 東京って」 意味不明のことを言って、 そっと、私の頬に触れた。 「数年前の 君の華やかな裸体の写真を見たよ。 バラの中の貴女はとても美しかった。」 「…………」 顔をゆっくりしか動かせない私は、 横に振っても、その手を払い除けることができない。 「桃田和哉を使う際、過去を調べていたら、君や水城ユウの事も一緒に上がってきたんだよ」 …………だから 研究所で篠崎から私を教えられた時に、 ハッとした顔をしていたのね。 「私は奥ゆかしい日本の女性が大好きだ。 女はそんなに忙しく動き回る必要はないと思う」 そして、 また、わけのわからない事を言い出す。 だけど、私たちの事を知ってるのなら話は早い。 「夫を薬で治してあげてください」 「美和が投与して、もう、彼は治ったみたいだけどね。」 「え」 どうして、 あの女が、ユウを? …………まさか…… 「ケガが治ったらここから出して、お願い!」 ____あの時、 ガードレールにぶつけた車から ガソリンの臭いと、 何かが燃えていく音を聞いて、 確実に自分は死ぬんだと思った。 昔の罪が、 死神を呼んでしまったんだと…… 「君の命を拾ったのは私、 君の未来を決めるのは私の権利だと思っている」 「…………な」 ……なに、いってるの? 「もう少ししたら、地上には、 地球にとって必要な人間が多く残るはず」 学力的に頭のいい人は、 人権なんて簡単に無視してしまうの? 「世の中にゲイと年寄りはいらない、ね、ゆかり」 ___″ゆかり″ って、誰? 「本物のゆかりは、もう少し年を取ってるかな?」 ずっと、 意味不明の言動をするエイドリアンは、 腕を動かせない私に また、 点滴で何かを投与し始めた。
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