本質

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「さみっ」 律子と、よく得体の知れない少年を、 とりあえず監禁部屋から逃がして、 あと20分の間に何とか外との接点をつかんで欲しいと願い、 滑稽な姿でノックアウトされた男二人をチラリと眺める。 何か着なければ………… 男の首を絞めていた衣類をしかたなく、スルスルと抜き取っていると、 「派手にやってくれたね」 物音たてずに入ってきた篠崎美和と、 同じく防護服を着たエイドリアンが背後に立っていた。 「君は男にしておくのは勿体無いほど綺麗な顔をしているな」 その、見えない表情から、 気色の悪い言葉が出てきて、 昔俺を犯し続けた男の顔が頭をよぎった。 「だけど、君を急激に女に変える内服クスリは発明できてなくてね」 「………………何のクスリなら発明してるんだよ?」 「……………過激過ぎるから、知らないほうがいい」 人は、 時に欲望の対象を間違えることもある。 「篠崎くん、 君の新発明品を御披露目してあげなさい」 「はい」 「!!」 篠崎美和が、退室後、すぐに部屋に戻ってきた。 「か、 和哉?!」 再び入室してきた、篠崎美和に首に紐を括られてひっぱられてきたのは、 「殺人兵器に変貌した 君の因縁の相手だ、どうだ? 凄い顔だろ?」 ヨダレをダラダラと流して、 こちらを、 獲物でも見るかのように狙い定める桃田和哉の姿だった。 「もっと楽しいショーにしたいわね」 おまえら、 その、防護服の下で、どんな顔をして こっちを見ているんだ? その防護服には、 どんな意味があるんだ? 「狂犬病を発症した和哉は、 あと数時間以内にクスリを飲まなければ、死んでしまうのよ」 俺は また、 汚れた体液に 冒される運命に晒されているのか? image=488502848.jpg
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