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篠崎美和に、狂犬病のウィルスを打たれてしまったらしい和哉は、
確かに恐ろしい顔をしていたけれど、
「桃田和哉くん、君には何が見えてる?
目の前にいるのは、
今、刑務所にいるお母さんを陥れた悪魔だよ?
その悪魔がいなければ、君のお父さんはお母さんに殺される事はなかったはずなんだ」
防護服をまとったエイドリアンが、
恐らく幻覚を見て怯えているだろう和哉に何やら 囁いている。
二人防護服で身をガードして
何をたくらんでる?
「篠崎くん、
水城くんの最後を奥さまに見せてあげたらどうかな?」
まさか、
凶暴化した和哉に、
俺を………………?
「そうですね。
その方が彼女もあなたの性奴隷になる覚悟ができるかもしれないし」
……性奴隷……?
聞き捨てならないことを篠崎が吐いて、再び退室していく姿を目で追うも、
ただらならぬ和哉の変貌に、
体が動けなくなり
その背中を掴まえることはできない。
「ゆかりが井上とエボラ特効薬を再開発している間、
水城雪が夫の残骸を見て発狂する…………
それを手なづける楽しみが増えていいかもしれない」
「 ……父さん…………」
俺を見ては、
首をしきりに横にふり、頭をかきむしるウィルスに冒された男……
一体、どんな幻覚を見ているのか……
凶暴化しているはずの和哉の目から、
ホロホロと涙がこぼれ落ちていく。
「連れてきました」
その緊迫感溢れる一室に、
まだ倒れたままの研究員二人と、
上半身裸の俺、
エイドリアンと篠崎美和、
そして、
「ユウ…………和哉くん」
驚いた顔をした雪が
和哉と同じように、紐で括られて入ってきてしまった。
「君の大切なものを全て奪った悪魔を成敗するときが来たよ、和哉くん」
「悪……魔……」
和哉が、
雪に反応することもなく
「ア____ッ__!!」
俺に敵意と、
既に血だらけになっている歯を剥き出してして、
飛びかかってきた。
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