本質

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今まで、美しいものを作品として残す仕事を多くこなしてきたけれど 時に写真館での依頼の中に、 飼っている動物 (主に犬猫)の写真集を作ってくれと頼まれることがある。 動物は、好きでも嫌いでもない。 強いて言うなら猫の方が好きだ。 ……そう、 犬は時には大きすぎたり、獰猛そうで怖いと思うものもいる。 そして 野犬を見れば、確かに ″ 噛まれたらヤバい ″という認識が働いて逃げたくなるのは、 この狂犬病という、恐ろしい名前の病を知ってしまっているからだ。 「父さんを殺したのはお前だっ!!消えろっ!!」 日本がそれに関して清浄国31の中に収まり、 その恐怖が薄らいでいても、 世界では確かに広がりつつある病。 「和哉くん!!ちがう!! あなたのお父さんを殺したのは、 お母さんをそそのかした堀内でしょう?!」 俺が好きな 猫 からも感染して、 発症することもあるのだそう。 「うるさいっ!!!」 俺に飛びかかろうとする和哉を、 雪が止めに入ろうとする。 「雪っ!!!和哉に近寄るなっ!!」 …………雪を抱いていて、 時折、真冬の猫みたいだと思ったことがある。 暖房をOFFにした寝室は 寒くて、凍えそうなのに、 雪の体が俺の胸に心地よくのしかかると、 そこからジワリと、 温かさと優しさを感じて、 猫を抱いているような 幸せな気持ちになれたんだ。 「和哉っ!!その女もあなたの家庭を壊した張本人でしょ?? 刃を向けるなら一人だけじゃないはずよっ!!」 篠崎美和の挑発する甲高い声が和哉の動きを止める。 「…………ハァハァ……」 幻覚症状と全身の痙攣が始まった和哉は、 ワクチンを接種しても、 恐らく、もう助からない。 ____バタン!! 「かずやー!!なにしてるの?くるしーの?」 そこへ、 開いたドアの隙間から、 今までどこにいたのか、 ご機嫌な菜月が入ってきてしまう。 「菜月っ!ダメ!?」「菜月!!」 全身麻痺から痒みに苦しむ和哉の虚ろな視線が、 愛しい娘と、 「歯が痒い!…」 猫のような瞳をした雪を、 ガッチリと掴んでいた。 「菜月っ!!!」 動物の本能は、 自分より弱いものを襲おうとする。 獣は、 幼い猫を狙った____
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