本質

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2013年12月に始まったエボラ出血熱の世界感染拡大……。 新型インフルエンザN5型と同時進行するように、 世界中に感染者.死者を続出させている。 まさか、 学生時代に研究していた治療薬の研究を、 再度 妻のゆかりとする事になるなんて思わなかった。 防御服とマスクの隙間から見える、ゆかりの顔は、 「…………何だか、若返ったな」 昔の彼女に戻ったような、色艶があった。 「エイドリアンに若返りの薬を打たれているから」 「……そ、そうか。」 エボラ出血熱の治療薬製造の再現をしなければ、娘の瑠璃の命の保証はないと 悪魔に脅迫され、 それが世界の為になるならと、 久しぶりに研究室に入ったのはいいが、 研究者としての勘や技量の衰えを感じさせないゆかりの能力に ただ、ただ感嘆するばかり。 「これ、本当に世界の為かしら?」 「さぁ、やつの事だから、これも人種別に効力を変えてしまうんだろうな」 「…………そうよね。きっと。」 そう、 きっと、 新型インフルエンザワクチンが、エボラ出血熱に有効だと承認され、 治験が終わり、パンデミックの世界承認が降りれば、 エイドリアンは、 某薬品メーカーに出し抜かれてしまう。 「何が何でも、今すぐ製品化したいのよ」 そんな自己利益しか考えない悪魔の手元に、 これを渡すわけにはいかない。 「出来た…………″アビランN5″」 必須の動物実験を何とかクリアして、 これを、いち早く世界中の患者に投与して回りたい。 「ゆかり、いい考えがある」 世界を好きなように牛耳ろうとする悪魔の手を、 そろそろ 払いのける時が来たようだ。
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