70人が本棚に入れています
本棚に追加
「菜月っー!行っちゃダメ!!」
篠崎美和の浅はかな私欲を利用し、
和也くんに狂犬病のウィルスを接種を実行させたエイドリアン、
最終的な性的パートナーに育てあげるつもりの菜月が飛だしてきて、
やや焦った表情を見せるものの、
「まず、それから いくのか」
防護服のまま、ニヤリと笑っているのが見えた。
きっと、この男に、まともな愛情は育まれることはないんだと思い知らされる。
「菜月っこっちに来なさい!」
「かずや、お腹減ってるの?!」
幻覚と、
身体中の痙攣と痒みに悶え苦しむ和哉くんは、
近寄る菜月に思い切り両手を伸ばしてきた。
「菜月っ!!!」
ユウと、
私が、
同時にそこへ向かった瞬間だった。
「この子は違うのよっ!!!」
防護服のヘッドの部分が外れたままの篠崎美和が、
「美和?!」
菜月を、
思い切り抱き締めていた。
昔、インフルエンザの脳症で、
娘を失ったという篠崎美和。
カノジョの中の母性は、
残されていた本質の大半を占めていたはずで、
______「あっ!!!!!」
和哉君の白い歯が、
その最後の人間らしさを見せた篠崎美和の首筋に、
赤い滴を伴いながら、
食い込んでいくのが見えた。
まるで、
バンパイアの映画を観ているような感覚だった。
最初のコメントを投稿しよう!