本質

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「菜月っー!行っちゃダメ!!」 篠崎美和の浅はかな私欲を利用し、 和也くんに狂犬病のウィルスを接種を実行させたエイドリアン、 最終的な性的パートナーに育てあげるつもりの菜月が飛だしてきて、 やや焦った表情を見せるものの、 「まず、それから いくのか」 防護服のまま、ニヤリと笑っているのが見えた。 きっと、この男に、まともな愛情は育まれることはないんだと思い知らされる。 「菜月っこっちに来なさい!」 「かずや、お腹減ってるの?!」 幻覚と、 身体中の痙攣と痒みに悶え苦しむ和哉くんは、 近寄る菜月に思い切り両手を伸ばしてきた。 「菜月っ!!!」 ユウと、 私が、 同時にそこへ向かった瞬間だった。 「この子は違うのよっ!!!」 防護服のヘッドの部分が外れたままの篠崎美和が、 「美和?!」 菜月を、 思い切り抱き締めていた。 昔、インフルエンザの脳症で、 娘を失ったという篠崎美和。 カノジョの中の母性は、 残されていた本質の大半を占めていたはずで、 ______「あっ!!!!!」 和哉君の白い歯が、 その最後の人間らしさを見せた篠崎美和の首筋に、 赤い滴を伴いながら、 食い込んでいくのが見えた。 まるで、 バンパイアの映画を観ているような感覚だった。 image=488607268.jpg
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