本質

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「何をする気?」 エボラ出血熱の治療薬アビランN5のサンプルを再生出来た俺は、 元々のウィルスはすぐに死滅してしまうので、それを持ち出す事はせずに、 実験で使用した子猿を専用のケースに入れて、 研究室を後にした。 外で監視していた研究者達が、 俺とゆかりの周りを取り囲む。 「出来たのか?」 感染を恐れて、ワクチン製造に携わらなかった素人ども。 「いいや、あと一歩のところで、 俺は、この猿に噛まれた」 俺のたったその一言で、 「マジかッ!??」 防護服の下、血相を変えて、後ろへたじろいでいく。 「わ、ワクチン、サンプルは持ってないのか?!」 サンプルは ゆかりが持っている。 「失敗した実験に使いきった」 「増やしておけよ!!」 「過ぎた事は悔やんでもしょうがない。早く行政に連絡しろよ。 日本ではじめてのエボラ出血熱キャリアが発見されたって」 過去に、 エボラ出血熱を生物兵器として保持しようとした、宗教団体が日本にいたそうだが、 そのウィルスの死滅率と、感染力の弱さ、移動に莫大な費用がかかることから、その団体は生物兵器を諦めて、 科学でのテロを試みた。 それが地下鉄サリン事件_____ それほど、 エボラ出血熱は、 生物兵器としては価値がなく、 感染力も弱い、予防しやすいウィルスに他ならない。 新型インフルエンザや、はしかの方がよっぽど生物兵器には向いているウィルスなんだ。 まず、そのエボラを恐れるべき人間は、 感染者を治癒する立場の第一線の人間だけだ。 「エイドリアンに報告する義務がある、やつはどこに?」 エボラ出血熱より高い致死率をもつ狂犬病ウィルスを、 この研究所内でばら蒔いているなんて、 思いもせずに、 「わ、わかったから、その部屋から出るなよ!」 俺とゆかりは、 この日本でのパンデミックに完全な終止符を打つつもりでいたんだ。
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