本質

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「離して!ユウをあそこから連れ出して!」 狂犬病を発症した和哉くんと、 それに、噛まれてしまった篠崎美和、 そして、 「かずやとパパ、ケンカしちゃうの?」 …ユウを三人を惨劇の部屋へ置き去りにして閉じ込めたエイドリアン、 「水城と、桃田キョウダイたちは多くを知りすぎた。このまま外に出すわけにはいかない」 嫌がる私と菜月を、呼び寄せた研究員に拘束させて、 自身は、パソコンからその部屋の様子を伺っている。 「……………いくらノブを回してもドアを叩いてもその部屋は開かないよ」 何かの試合でも観るように、 中の人間の小さな動きに、嬉しそうに反応している。 「そうだ、その男を美和みたいに噛みきってしまえ、みんな発症したら、そこに妹の律子も投入してやる!」 人をウィルスで苦しめるだけでなく、 己の欲は正当化し、 仕事仲間も含めた、人同士の殺傷も 楽しんで観賞できてしまう、 このエイドリアンという男……… 「悪魔……… 鬼畜………」 本当に、 世界を破滅させてしまう 大魔王なのかもしれない。 「なんか、いったか?………ゆかり」 この時の私は 「せめて、菜月だけでもここから出して」 この男を、 どうやったら、消してしまえるのか、 そんなことばかり、考えていた。
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