本質

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バイオセーフティレベル【BSL】とは、 微生物、細菌、ウィルスなどの病原体を扱う施設の格付けを表すもの。 「さぁ、早く エイドリアンに 井上がエボラ出血のキャリアになったとと伝えろ!」 BSL4に値する最強のウィルスは、 今世間を賑わせているエボラ出血熱やラッサ熱ウィルス、過去に撲滅した天然痘を含めた9種類。 そのレベル4の稼働ができる施設は、 日本に3つあるとされているが、 そのうちの二つは、地域住民の反対により、レベル3までのウィルスしか扱うことができない。 日本で唯一、レベル4のウィルスを扱うことができるのは、 現在、このTウィルス感染症研究所のみ。 大学時代のエボラ出血熱の治療薬の研究は、 違法なので、闇に葬られていた。 「エイドリアン博士!井上が実験用の猿に噛まれたみたいです! あ、いえ、アラビンN4の製造結果は聞いてません!」 保持していたサンプルが、 今、ようやく世の中に役立つ時がきた。 「井上を隔離!」 研究所が一気に慌ただしくなる。 どうする? エイドリアン。 海外ではエボラ出血熱撲滅に、棒有名な医師団体と軍隊が出動したようだが、 日本では、 誰が動く? やはり、 俺を抹消して、違法廃棄するのか? 「私は感染してないわよ!」 一緒に培養、製造に携わったゆかりが、 一人別室に隔離されていく。 ゆかりを、 やつのオモチャにさせる気なんかない。 「わ、お、おい、寄るな!!」 俺は、ヤツを待たずに エボラ出血熱に感染した猿を抱えて 研究所内を歩き始めた。
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