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……どうしたらいい?
どうしたら、ユウを救える?
「しばらく、君にはさみしい思いをさせてしまうから、菜月とももに親子水入らずの二人きりの時間をプレゼントしよう」
エイドリアンは、
体が震えて言葉も出なくなった私を元の部屋へ軽い力で押し込めていく。
「…………美和、あの子を連れておいで」
いつも別室にて遊ばされている菜月を、
連れてくるように言われた篠崎美和は、
少し不満そうに、そこを立ち去った。
「水城が亡くなると同時に
井上のデータを元にエボラ出血熱のクスリが製品化されて、その井上が新型インフルエンザ拡散の犯人として殺害される」
エイドリアンは、二人きりになった部屋で
先程も聞いた恐ろしい計画を私の前で繰り返す。
「そして、水城と妹、井上を殺害した狂犬病の桃田和哉が、世間にそのウィルスを撒き散らしながら、
罪悪感にさいなまれて、孤独に死んでいく」
「…………狂犬病は、クスリで治るんじゃないの?」
私を静かにベッドに押さえつけながら、
また、
例の若返りのクスリを取り出すエイドリアン。
「殺人鬼に使うのはもったいない。高いクスリだからね」
「同じ研究員まで、騙すの?」
篠崎美和が、和哉くんだけは助けたくて
提案した計画……
「彼は、私の世界には必要ないからね」
静脈部に何度もクスリを打たれ、
そこは、紫色に変色していた。
「篠崎美和は、男に溺れてしまうダメな女だよ」
この若返りのクスリと、筋肉弛緩剤に副作用はないのだろうか?
「本物のゆかりと共に、快楽漬けの日常になるまで、もう少しの辛抱だ」
また、力が入らなくなっていく私に
軽くキスをして出ていく西洋の悪魔。
「ママー、パパと和哉どこにいったの?」
入れ替わるように、
そこへ天使のような菜月が入ってきた。
___どうしたら、
元の生活に戻れる?
「早くおうちに帰ろうよー」
脱力していく腕で、
精一杯、菜月の体を抱き締める。
「…………そうね……帰りたいね」
菜月と、
ユウだけは、
元の生活に戻してあげたい。
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