本質

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男たちに押さえられながら、 篠崎美和から、恐怖の返事を待つ。 「発熱、嫌悪感、頭痛、そして、筋肉の痙攣、幻覚……」 幻覚…… 「そして、液体を口にすると、ものすごく喉が痛くなるから、水を恐れるようになるの。 そこから、″恐水症″とも言われてる」 犬の病気だとばかり思っていたその症状を聞いて、 体が震えてくる。 「最後は犬のように大量のよだれを垂らして止まらなくなるから、狂犬病というのかもね」 「発症して、治るのか?」 …………狂ってる…… そんなもん、打って何がしたい? 「普通は、発症したら死ぬわ。 だけど、私なら治せるクスリを持っている」 「何で、それを俺に打った?」 気のせいか、 打たれた箇所が、感覚がおかしくなってきたような気がする。 「人格を失うの。 幻覚が狂暴性を増してしまう」 …………この女は何がしたい? 「俺をどっかの戦地にて送り込むのかよ」 「まさか」 押さえられた俺を、嘲笑うかのように 嬉しそうに笑う。 「水城と井上博士と 妹を殺害してもらうのよ」 悪魔に魂を売った人間は、 きっと、 こんな風に笑うんだろう。 image=488344389.jpg
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