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和哉が、篠崎美和に一人連れ出されて丸1日。
六畳ほどの暗い部屋で、
律子と、よく知らない男の子と俺と三人、
今では殆ど会話もなく過ごしている。
与えられた水分と食糧はもうほとんどない。
「お兄ちゃん……生きてるよね」
体操座りをした律子が、あと数滴分ほど残っているペットボトルを指でつまみながら、とても寂しそうな顔をした。
「篠崎美和が和哉を殺すなんて想像できない」
だけど、
警察に引き渡す風でもない俺たちを、
このまま飼い殺しにするというのも
、エイドイアンならないと思った。
国家機関は、
本当にエイドリアンの犬に成り下がってしまっているのか?
「あの藤子みたいな女とヤりまくってるんじゃないの?」
若い男が、本当に口惜しそうに言うから、律子があきれている。
「お兄さんの書いていた記事……発売されたかな?」
井上博士がパンデミックを引き起こしたというデタラメ記事……。
「あれが世にでれば、和哉は用なしか、それとも逆に行方が分からないと世間が騒いでしまうキッカケになるのか」
話ながら、窓から廊下の様子をうかがう。
24時間 部屋の外で監視している研究員はいつも同じではない。
____ここから出て、
雪と菜月を手元に取り戻したい。
律子とこの少年を出してしまえば、何とかならないか。
「また、監視が変わったぞ、二時間ごとに交代らしい」
今度は、かなり若い男たちだ。
「なあ……」
俺は、
体操座りのまま、ウトウトし出した律子に聞こえないように
よく知らないその少年に小さな声で話し掛ける。
「俺は今からレイプ魔に変貌する」
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