破裂

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何でエイドリアンは素っ裸なんだ? おまけに、何でそんなに脂汗をかいているんだ? 男同士とはいえ、そんなもの見たくないのは、同じ研究員も同じようで 「博士……娘を連れてきました。 あの、なにか身に付けられては?」 フックにかけられた白衣を着るように薦められていた。 「……それより、Lカルチか、ニトログリセリンを格納庫から持ってきてくれ…… 桃田和哉は、なぜ復活してるんだ?」 そうだ、 俺に狂犬病ウィルスを打って、 ユウさんや井上博士達を殺そうと企てた篠崎美和は、どこに消えたんだろう? また、この研究室のどこかで媚薬や生物兵器を創作しているんだろうか? 錯乱していたときの記憶が、所々抜けていたところに、 菜月ちゃんを抱えた男が現れる。 「ママー!」 「菜月!」 愛しい名前を呼んだのは、俺と同じように拘束されているユウさんだった。 研究員に心臓発作の薬を渡されて、すぐに飲み込んだエイドリアンは、 その間も銃口を雪さんの頭に突きつけたまま、痛みと憎悪で歪んだ顔を緩めなかった。 「……娘を押さえておけ。井上もまだ取り押さえられないのか? ……ゆかりも連れてくるんだ」 ずっと、冷たい銃口を突きつけられたままの雪さんは、 唇を紫にして、少し震えているようだ。 「菜月!雪っ」 ユウさんが暴れると、 「静かにしろ!」 押さえていた研究員が、その長い髪を引っ張って首にチョップをかませていた。 「……っ」 項垂れる夫の姿を見て、 ますます青ざめる雪さん。 「ゆかり」 そして、 そこに井上博士の妻のゆかりさんが連れてこられる。 博士と同年代のはずなのに、 とても若々しく感じた。 「…………さあ、選別の時間だ」
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