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桜舞う並木道に、やわらかな日差し。麗らかな春の景色というにぴったりの光景では無いだろうか?
俺こと鶴来 楓<ツルギ カエデ>が源王学園に入学して二年目の春がやってきた。
少し光景が変化しただけで、通い慣れたこの道も新鮮に思えてくるから不思議なものだ。なんて、年寄りめいた事を思って和んでいた頃が今は懐かしい。
俺の世界は、この一年で劇的に変わっていく。
とても「普通」の一言では表せない、愉快で不思議で悲壮な一年の中で。
─*
突然だが、俺には友達と呼べる人や、大切な人と呼べる人は一人を除いていない……たぶん。
『いない』
こんな表現よりも、作らない様にしてきたという表現の方が適切かも知れない。故に、俺の高校生活は灰色と呼ぶのに相応しいだろう。
別に後悔もしていないし、変えようとも思わない。これで良いんだ。
深く干渉しなければ、闇の先なんて見られることは無いのだから。
でも。
本心は、退屈だった。自発的な事とは言えど、孤独を感じるのに慣れなんてあるのだろうか?
重ね着た虚の鎧は、孤独の分だけまた重量を増やして行く。
――俺は無意識に探していたのかも知れない。
――その虚な呪縛から解き放ってくれる人を。
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