24人が本棚に入れています
本棚に追加
ソレが起きたのは学校へと繋がる横断歩道でのこと。
世界記録でも弾き出すのでは無いかと思う程の快走で、なんとか遅刻を免れることが出来そうな目処が立った。
きったない場所もとい雰囲気の悪い近道を抜けて開けた道へと出る。すると目前には、あら不思議。目的地が見えるでは有りませんか!ってね。
横断歩道を渡れば、直ぐそこは学校。気分は上々でしたよ。難易度が高ければ高いほど、クリアした時の高揚が楽しめるってもんだ。うんうん。でも俺はイージーモードが好きかな。やっぱり楽したいし。
そんな陽気な脳内会話は横断歩道に目を向けた瞬間に別の思考に切り替わる。
視界に学校を収め、スパートを掛けるべく横断歩道へ体を向けると、そこには何やら人垣があった。
見るからにきったな――柄の悪そうなお兄さんが3人と、自分と同じ学校の制服を身に纏った女の子が1人。何やら不穏な空気が漂っている。
事なかれ主義の俺からして見れば、あそこに近づくのは躊躇われたが、遅刻寸前! 背に腹は変えられない。生活指導の先生って、げに恐ろしき生物だからね。きったないだけのあれとかそれとか霞んじゃう本物だからね。
というわけで、私は無関係ですよー的なオーラを全身に纏い、横断歩道へと身を投げた。身投げである。決死の覚悟があった。
横断歩道のちょっと先、集団の後ろの程々に離れた場所で足を止める。適正距離だ。
ここで待機して、信号が青になった瞬間に抜群の加速でもって抜き去って駆け抜ける。これが至高の選択肢だろう。
しかし、まぁ。女の子一人に集団で集る怖そうなお兄さんってのも不埒な香りがする。
「……ちらり」
楓は様子を伺った!(盗み聞き的な意味で)
すると、いかにもチャラ男を彷彿させる様なイントネーションの、芋臭い声が聞こえてくる。
「ガッコーなんかサボって俺らと遊びいこーや」
なんとも手垢の臭気漂うセリフだった。この後の展開は手に取るように分かるぞ。
最初のコメントを投稿しよう!