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目を覚ますと、見知った天井が視界に映った。
十五年間暮らしてきた僕の部屋だ。
まあ、正確に言えばきっちり十五年間この部屋で過ごしていたわけじゃあないけど。
そのままぼんやりと天井を眺めていると、不意にピピピと電子音が耳に届いた。
ケータイを手に取り、アラームを止めてぐっと伸びをする。
気だるい。
「そういえば……そうだったな」
低血圧のせいか、昔から朝に弱かった僕だが、この日に限っては早起きしたのだ。
あの奉日本真白との会話を夢だったのか、なんて思うことはない。
半年後に変えることになる手元のガラケーが、僕が本当に中学一年生の入学式にまで時を遡ったということを示していた。
事実を知って尚、意外にも僕は落ち着けている。
それは奉日本真白ならなんでも出来そうだから、ではないだろう。
じゃあ何故かと問われても分からない。
ここが僕のプライベートルームだからかもしれないし、驚き過ぎて逆に落ち着いているのかもしれなかった。
だいたい現在時刻はまだ午前六時。
騒ぐには少しばかり早い。
ご近所さんに怒られちゃうからね。
僕がいい子過ぎて辛い。
そんなくっそどうでもいいことはさておき、こういうのをタイムリープというのだろうか。
僕だけが時間を遡って中学生活をやり直せる。
そう言うと、なんだか特別な存在のように聞こえるが、それは違う。
僕が特別なのではなく、彼女が特別なのだ。
僕は至って平凡な中学生に過ぎない。
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