序章【Rematch:再戦】

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 変わりたくないか、か……。  それは正直に答えれば変わりたい、だろう。  だが、人間はそう簡単に変われるものではないことを、僕は知っている。 「……変われるなら、変わりたいな。でも、変われないから、それなら、やり直したい、かな」  やり直せないことも、もちろん知っていたけど、つい口からそんな台詞が零れた。  僕の返答を聞いてにやりと口元を歪める奉日本。 「そっかそっか! じゃ、やり直しちゃいなよ」  あっけらかんとそう言った。 「……人生はやり直せない。そんなこと、誰だって知ってる」 「――いや、やり直せるさ。あ、でも、一回しか使えないから、よーく悩んで、もう一回を絶対に満喫してくれよ? 私も手伝うからさ」  なんだ、電波か……。  うちの学校の生徒会長は完璧超人だと聞いてたけど、そうでもなさそうだ。  まあ、噂には尾ひれがつくと言うし、仕方ないのかもしれなかった。 「あ、その目は信じてないね、君。生徒会長をなめちゃいけないぜ? 説明は面倒だから、これは強制だ。君の課題はそうだな……青春を見つけること」  青春、ね……。  僕には縁の無い言葉だ。  もう一回、本当にやり直せるなら死ぬ気で探してみてもいいかもしれない。 「はは……」  思わず微笑する。  そんな僕を見て、奉日本も笑った。  整った顔でする笑顔は逆光であまりよく見えなかったけど、それでも、なんとなく、眩しかった。 「それじゃ、一緒に行こうか――もう一回、中学時代へ」  その言葉と同時に、僕の視界は真っ黒になった。
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