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自分の声も乾く。
唇を舐め言葉を吐き出す。
「同姓を好きになるって気持ちは今もわかんねえ。周りの奴にどう見られるか考えると怖くなる。それでも俺は啓太が好きだ。この一ヶ月間おまえに無視されて・・・、気をつかってくれてるって、わかってはいたんだが、それでも寂しかった。」
握った手が熱い。
どちらの体温がわからないがとても熱かった。
「付き合ってくれ、啓太。」
最後は怒鳴るような言葉になってしまった。
頭まで血が上っているのがわかる。啓太にこの顔を見られなくてよかったと思った。
「な・・・なんで泣くんだよぉ。」
「うるさい。泣いてなんか無い。」
ごしごしと繋がった手と反対の手で啓太が目元をこすった。その仕草に愛おしさを感じぎゅっと手を握る力を強くする。
「ぎゅ?。」
力を入れたとたん腹の虫が鳴き声をあげた。その音に啓太がようやく笑い声をあげる。
こんなにも頭を使ったのは始めてのことなのだ。ほとんど動いていないのにも関わらず、頭を使うと腹が減る。仕方が無いことだと太一は腹を押さえた。
「腹が減ったから、けいたの手作りクッキーを食いに行こう。どうせ余ってんだろ。」
「ホワイトデーも食うのかよ。そりゃいっぱい作ったけどさ。」
突っ込みをいれながら啓太が振り向いた。
少し目元は晴れていたが、ああ、やっぱりかっこいいなと太一は思った。
いつからだろう。こいつが自分の中で大切な人間になったのは。
下校途中のいつもとは違う夕暮れ。
握った手は家に帰るまで離さなかった。
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