第1章

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 自分の声も乾く。  唇を舐め言葉を吐き出す。  「同姓を好きになるって気持ちは今もわかんねえ。周りの奴にどう見られるか考えると怖くなる。それでも俺は啓太が好きだ。この一ヶ月間おまえに無視されて・・・、気をつかってくれてるって、わかってはいたんだが、それでも寂しかった。」  握った手が熱い。  どちらの体温がわからないがとても熱かった。  「付き合ってくれ、啓太。」  最後は怒鳴るような言葉になってしまった。  頭まで血が上っているのがわかる。啓太にこの顔を見られなくてよかったと思った。  「な・・・なんで泣くんだよぉ。」  「うるさい。泣いてなんか無い。」  ごしごしと繋がった手と反対の手で啓太が目元をこすった。その仕草に愛おしさを感じぎゅっと手を握る力を強くする。  「ぎゅ?。」  力を入れたとたん腹の虫が鳴き声をあげた。その音に啓太がようやく笑い声をあげる。  こんなにも頭を使ったのは始めてのことなのだ。ほとんど動いていないのにも関わらず、頭を使うと腹が減る。仕方が無いことだと太一は腹を押さえた。  「腹が減ったから、けいたの手作りクッキーを食いに行こう。どうせ余ってんだろ。」  「ホワイトデーも食うのかよ。そりゃいっぱい作ったけどさ。」  突っ込みをいれながら啓太が振り向いた。  少し目元は晴れていたが、ああ、やっぱりかっこいいなと太一は思った。  いつからだろう。こいつが自分の中で大切な人間になったのは。  下校途中のいつもとは違う夕暮れ。  握った手は家に帰るまで離さなかった。
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