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ちょうど5時のタイミングで、アラームの電子音がなった。外はまだ真っ暗だ。
寝る前にもう一度薪を足しておいたおがげで、家中が暖かかった。だけど、暖かいのは、そのせいだけではない。
リビングのソファーに寝ている君がそう感じさせたんだ。
きっと、つい先ほどまで起きていたんだろう。デッサンがかなり進んでいるようだった。
長いまつ毛、軽く結んだ唇。ソファーの上で毛布に丸まって眠っている君は年齢よりも幼く見えた。それが何故だか不思議に思えて、俺は君の瞼にかかった髪をそっと払いのけてみた。
『んっ....』そう言って横を向いた君の髪が流れて...綺麗な顔を隠してしまう。俺がそうしたのに、なんだか残念になってしまって、中指で髪をすくい上げると君の耳にかけた。
「この時、俺、胸の奥がやけに痛くてさ。
柊哉、俺........気づいたんだよ。君が好きなんだって。
君に恋したんだ...ってさ。そう認めたら、その日までのいろいろな感情が俺の中にストンと落ちてきたんだ。
だけど、やっぱり俺達は男同士でさ.....うん、だから、難しいよな。」
『柊哉、起きろ。行くぞ。』
『あっ。........遼介さん....おはようございます。』
『おはよう。ちょっとは眠れた?外、雪も止んだしきっと綺麗に見れると思うよ。準備して出よう。』
俺は、リュックに、折りたたみの椅子。ポットに入れたコーヒーとカップを2つ。パン。それから。毛布を1枚荷物に入れた。
昨日と同じように肩から下げた俺の一眼レフのカメラは、風景じゃなくて君を撮るためだった。
『用意大丈夫?ずいぶん薄着だね。』
『...大丈夫です。........これしかないので。』
俺は心配になって、君にはちょっと大きかったけど、俺の分厚いセーターを無理矢理着せたんだ。
『じゃあ、行こうか?』
『.......はい。』
俺達が裏の獣道を歩いているうちに空が白んでき始めた。
『柊哉、走るぞ!』
夜中に降り積もった雪が足に絡みついて、早くは走れなかった。俺は、君の大きなスケッチブックを奪いとって小脇に挟むと、無理矢理柊哉の手を握って走った。
「あの時は君にあの景色を見せたくて、俺、必死だったんだ。」
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