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『すみません、眠ってしまって。肩も..ごめんなさい。遼介さん、お仕事ですよね?今から間に合いますか?って言っても、ああもう....本当にすみません。』
『大丈夫だよ。今日は急ぎの仕事もないし、普通に有休とれたし。俺さ、有休がたまり過ぎてるから消化しろって、いつもうるさく言われてるんだ。だから、全然平気。』
地下鉄の終点の駅まで、俺は柊哉に肩を貸したまま時々その寝顔を覗き込んでいた。
終点に着いた時間なら、そのまま折り返せば出勤時間にはギリギリ間に合う時間だったけれど、久しぶりに君に会って俺は少し浮かれていたんだ。
『でも.........すみません。僕のせいで、お休み.......』
『だから、いいんだって。で?絵、出来たんだろ?』
『はい。今日本当はそれだけ伝えたかったんです。ちゃんと完成したら、見て下さいって。』
『うん。楽しみだな。そういえば、俺もこの前撮った写真を現像したよ。』
『どうでしたか?』
『自分では、結構自信作。いい感じに撮れたと思う。』
俺がそう言うと、君はその大きな瞳を輝かせて上目づかいに俺を見た。それから、ゆっくりと探るように、『遼介さん、それって今持ってますか?すごく見たいです。』って言った。
『今はないけど.......じゃあ、うちに見に来る?1日暇になったわけだし。』
『いいんですか?』
『いいよ。そのかわり、どこかで飯食ってからな。
それと、柊哉、携帯持ってないだろ?』
『あーはい。特に必要ないので。』
『あのさ、君に連絡したい時に....っていうか、今時携帯ないとかありえないし...まあ、俺が必要なの。とにかく、ショップに寄るから。』
携帯なんて使わないから要らないって君は言いはったけれど、俺が限界だった。今朝までは、もう会わないほうがいいと。そう、自分に言い聞かせていたのに、実際に君に会ってしまったら、会いたい気持ちが止まらなくなった。
友達としてなら.........心の奥の自分が、そうつぶやいた。
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