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車輪の音、2ヶ国語で流れる車内アナウンスの声。
いつもの車内、見慣れた人達。
見慣れてはいるが、挨拶を交わすことはない。
ドアが開くと、あたりまえのように君は、俺の隣りに駆け寄ってきた。
今日もまた...この殺風景な車内に、甘やかな風を運びながら。
『遼介さん。おはようございます。』
『おはよう。昨日はどうだった?』
『それが............もう少し、探してみようと思います。』
『あんまりだったんだ。』
『はい。』
『俺、家に帰ってから思い出したんだけど。』
俺は鞄の中からタブレットを取り出して、君の前に差し出した。
『俺、時々なんだけど写真をやっててさ、この場所とかどうかな?』
俺は自分で撮った景色の写真を何枚かめくりながら、君に見せたんだ。
『これ全部遼介さんが?わぁぁ、これも?素敵ですね。ここはどこですか?』
君の目にとまったのは雪野原で撮った一枚で、空の隙間から太陽の光が差し込んで、ダイアモンドダストを作った瞬間を撮ったものだった。
『ここから、車で2、3時間くらい行ったところなんだけど。』
『車...ですか?』
『うん。車だと無理?』
『.........はい。車、ないので。』
『そうか。あのさ、ここ行ってみたい?もし、気に入ったなら連れて行ってあげようか?週末なら仕事も休みだから。』
『そんな。それはだめです。そんな事お願いできません。』
「君は笑うかもしれないけど、初めは本当にそんなつもりじゃなかったんだ。君に俺のお気に入りの風景を見せたくてさ。本当にそれだけだった。」
『実はこの写真、去年のなんだ。だから今年もこの風景なのかどうかもわからないけど、俺も写真撮りたいし。どうせ行く予定だから、よかったら。』
『いいんですか?』
『いいよ、もちろん。あっそうだ、でも日帰りじゃないんだけど、もしそれが大丈夫なら。』
『泊まり?ですか?』
『うん。実は俺、この場所すごく気にいってさ、写真を撮るために小さなログハウスを買ったんだ。
小さいっていっても、2人くらいならちゃんと泊まれるし、いろいろ気を使わなくても平気だから。』
君は少し困った顔をして、遼介さんがご迷惑でないなら、お願いします。
そう、返事をしてくれたんだ。
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