アンダー・ザ・コントロール

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「ピンを抜いてから3分だ!」 防護服に身を包んだ監視員に羽交い絞めにされたヤウは叫んだ。 「黙れって言ってんのが聞こえねぇのか!?」 前に立つ別の男が、ヤウの顔面を殴る。勢いよく振りかぶった拳が右頬にめり込み、鈍い音がした。彼は血と共に折れた歯を数本、吐き出した。 顔は血まみれで、原型を留めない程に腫れていた。抵抗できない彼に対して、男は非情な暴力を振るう。暴力行為を楽しんでいるのか、高笑いを上げていた。 ヤウはどす黒く爛れた顔で微笑み、静かな口調で僕に語り掛けた。話が終わると、彼を捉えている男の向こう脛を、思い切り蹴り上げた。 男が悶絶して怯んだ隙に、彼は胸元から手榴弾を取り出した。 「離れろっ!」 ヤウの必死の形相に僕は後ずさった。十分な距離を保った所で、ヤウは2人の監視を道連れにピンを引き抜いた。 凄まじい爆破音が鳴り響き、ヤウは見る影もなく、一瞬で肉片の塊になった。 肉片が飛び散った床に鮮血の海が広がる。 焦げた肉と生臭い匂いが辺りに充満した。 170、169、168……頭の中ですでにカウントは始まっていた。
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