赤いべべ着た毬藻くん

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「クッ、クッ、クッ…」 「いい加減にしないと、ぶん殴るぞ! この似非ホスト!」 長い廊下。 ホストの後を膨れっ面で付いて歩く。 「俺は、いち教師であって…ホストではない!…プッ…クハッ!」 まったく、失礼なホスト教師だ。 「…じゃ、俺が呼んだら入って来いよ…クハッ」 小さな正方形のガラス窓の付いた扉をガラッと開けると、男子高校生らしからぬ甲高い悲鳴のような声が廊下にまで響いてくる。 あちらの学校では、こんなみっともない声をあげたら処罰ものだ。 日本の教育も地に落ちたもんだとこめかみに指をあてる。 「  !…ぎょ!?」 ん? 「何をしている?呼んだら入って来いと言った筈だぞ。 クハハッ…きんぎょ! 『お池の きんぎょ』!」 入る前から、クスクス笑いが洩れ聞こえる…。 人様の名前で笑うとは何ごとだ! 「俺は『お池の きんぎょ』ではない! 『御池野 ミイケノ・きんぎょ』だ!」 そう怒鳴りながら、教室に足を踏み入れた。 「…きんぎょじゃない…」 「まりもだ?」 一旦静まり返った教室が、大爆笑の渦に巻き込まれた。
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