きんぎょのおねだり

3/64
前へ
/506ページ
次へ
パソコンで時間を確認する…19時30分…昼寝にしては長過ぎか。 パソコンの灯りを頼りに、起き上がって先ず窓際に行く。 ピカピカに磨かれた窓、塵ひとつない行き届いた掃除。 窓を開ければ、木々の向こうに白い城のような建物の頭が見え…朧な月明かりに、銀色の丸い時計が光って見える。 眼下には校舎へと続く整備された道が月明かりに照らされ…道の所々の木々の合間に、また違った建物が点在しているようだ。 小さな庭園のようなもの、景色から少しかけ離れた和風の建物。 校舎そばの食堂…確か此処には職員用も入れて4つの食堂があった筈だ。 講堂と体育館が2つ…前の学校は体育館と礼拝堂しかなかったが、贅沢極まりなさすぎだな。 春の夜風は優しく、緑の匂いを漂わせている。 「桜並木が見たかったな…できれば、あいつらと桜の花の下を歩きたかったな…。」 アンニュイに浸っていて、ふと気が付く…パソコンの点滅。 パソコンの脇に置かれた私物…。 壊れたスマフォ、腕時計、爺さんのくれた万年筆、小銭と千円札の数枚入った渋い皮の財布…此処のパンフ…きん…金魚をモチーフにしたカード………………………………いい加減にしろ…。
/506ページ

最初のコメントを投稿しよう!

401人が本棚に入れています
本棚に追加