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季節の変わり目に、人は気がおかしくなりやすい。
春はひときわともいえる。
寒さが消えた季節は本当の一年が始まるスタート地点で、新しい環境への期待を背負って「よーいドン」と皆が走り出す。
けれど、焦りと不安となれない走り方のせいで、まっすぐ走り続けられる人は少なくて。
期待と憧れでは追いつけない現実との狭間に生まれたギャップを埋めようと、走りながらスキップとジャンプをするかのごとく、ついには他人の予想の斜め上をいく奇行言動を起こす。
つまり、季節の変わり目は変な人が現れる。
いわゆる『ああ、春だからねぇ』の現象だ。
、、、、、、、、
「春風はじめました。さぁさぁ寄って見てって行きませんかそこのひと。春風はいらんかいね?」
その『ああ、春だからねぇ』の現象は、私の身近で起こっていた。
人気のない真昼の通りにポツンと立ったバス停と私。
呼ばれたのは明らかだったので後ろの小さな公園へと振り返れば、私を呼んだ声がどうしてあんなに近くに聞こえたのか不思議なくらいの距離に、女の子がひとり小さな屋台からちょいちょいと手招きしているのが見えた。
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